80 歳の男性。脳梗塞による右片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅱ、下肢Ⅲ。下肢の随意運動は分離運動がわずかに認められる程度である。歩行はT字杖と短下肢装具を使用して自宅内移動が可能である。ADL指導で最も適切なのはどれか。
- ベッド上で起き上がる
- 低い段を昇る
- 低い段を降りる
- ズボンを履く
- 浴槽に入る
解答解説
正解は1. ベッド上で起き上がるです。
この患者のBrunnstrom法ステージ(上肢Ⅱ、下肢Ⅲ)から、上肢の随意運動はほとんどなく、下肢も随意運動が十分ではない状況がわかります。また、歩行にはT字杖と短下肢装具を使用していることから、移動動作にはサポートが必要です。「ベッド上で起き上がる」動作は基本的なADLであり、患者が自立するために最も重要な指導内容です。
各選択肢の解説
- ベッド上で起き上がる
この選択肢が正解です。
ベッド上での起き上がりは、日常生活の基礎動作であり、移動や更衣、食事など他の動作の前提となる重要な動作です。この患者の運動機能に合わせて、ベッド柵や健側を活用した指導が可能です。 - 低い段を昇る
この選択肢は誤りです。
段差を昇る動作は、下肢の強い筋力やバランス能力が必要です。Brunnstrom法ステージⅢの下肢では随意運動がわずかに可能な程度であり、この動作の指導は現時点では難しいです。 - 低い段を降りる
この選択肢は誤りです。
段差を降りる動作も、昇る動作と同様に筋力やバランスが求められます。この患者には難易度が高いため、優先的に指導すべき内容ではありません。 - ズボンを履く
この選択肢は誤りです。
更衣動作はADLの中でも重要ですが、上肢のBrunnstrom法ステージがⅡであり、随意運動が乏しいため、自力でズボンを履く動作の指導は現時点では適切ではありません。 - 浴槽に入る
この選択肢は誤りです。
浴槽に入る動作は、転倒リスクが高く、特に片麻痺患者にとって難易度が高いです。まずは安全に起き上がる動作を習得した後に指導するべきです。
ワンポイントアドバイス
Brunnstrom法ステージⅡ~Ⅲの患者では、安全性を重視した基本的な動作(起き上がりや立ち上がり)を優先的に指導します。患者の運動能力に応じた段階的な指導を行い、生活の自立を目指すことが重要です。