理学療法の臨床実習に参加している学生。脳梗塞による左片麻痺患者の評価を臨床実習指導者と行った。患者は常に右側を向き、左側からの声かけへの反応が遅かった。担当作業療法士の診療記録から収集する検査結果で最も優先度が高いのはどれか。
- BIT
- FAST
- Stroop test
- WAIS-Ⅳ
- WCST〈Wisconsin Card Sorting Test〉
解答解説
正解は 1. BIT です。
解説
患者が「右側を向き続ける」「左側からの声かけに反応が遅い」という所見から、**半側空間無視(左側空間無視)**が疑われます。半側空間無視の評価には、**BIT(Behavioural Inattention Test)**が広く用いられ、臨床的にも実践的な評価法です。
BITでは、線分抹消課題や描画課題など、日常生活動作に関連する検査を含むため、患者の無視の程度や日常生活への影響を確認するのに適しています。
各選択肢の解説
- BIT(正解)
BITは半側空間無視を評価する標準的な検査であり、線分抹消や線分二等分、時計描画などの課題を通じて無視の有無や程度を判定できます。今回の患者の状態評価には最も優先度が高い検査です。 - FAST
FAST(Frontal Assessment Battery)は、前頭葉機能を評価する検査で、遂行機能や抑制制御の障害を評価します。しかし、半側空間無視の評価には直接的に関連しません。この選択肢は不適切です。 - Stroop test
Stroop testは注意機能や抑制制御の評価に用いられる検査ですが、半側空間無視の直接的な評価には適しません。この選択肢は不適切です。 - WAIS-Ⅳ
WAIS-Ⅳ(Wechsler Adult Intelligence Scale)は、知的能力を評価する検査ですが、半側空間無視の評価には適していません。この選択肢は不適切です。 - WCST〈Wisconsin Card Sorting Test〉
WCSTは遂行機能(柔軟な思考やカテゴリー変更)を評価する検査ですが、半側空間無視の直接評価には用いられません。この選択肢は不適切です。
ワンポイントアドバイス
半側空間無視は、片麻痺患者のADLやリハビリテーション計画に大きな影響を与えるため、早期に正確な評価を行うことが重要です。BITは、無視の程度や実生活への影響を把握できるため、特に優先度が高い評価法として使用されます。また、無視の改善に向けた治療方針を立てる際にも役立ちます。