第54回

第54回理学療法士国家試験 午後問題35

前頭葉と側頭葉に限局性の大脳皮質の萎縮を認める疾患はどれか。

  1. Alzheimer型認知症
  2. 正常圧水頭症
  3. 脳血管性認知症
  4. Pick病
  5. Lewy小体型認知症

解答解説

正解は4です。

Pick病は、前頭側頭型認知症(FTD)の一種で、特に前頭葉と側頭葉に限局した大脳皮質の萎縮が特徴的です。この萎縮は行動障害や人格変化、感情の制御困難といった前頭葉機能に関連した症状や、言語障害といった側頭葉機能に関連した症状を引き起こします。画像診断では前頭側頭葉の萎縮が認められ、病理学的にはPick小体が確認されます。

選択肢の解説

  1. Alzheimer型認知症
    誤りです。Alzheimer型認知症では全般的な脳萎縮が見られますが、特に初期には海馬や内側側頭葉の萎縮が目立ちます。前頭葉や側頭葉に限局する萎縮ではありません。
  2. 正常圧水頭症
    誤りです。正常圧水頭症では、脳室の拡大が特徴で、大脳皮質の萎縮は通常認められません。この疾患では歩行障害、認知機能障害、尿失禁が三主徴とされています。
  3. 脳血管性認知症
    誤りです。脳血管性認知症では脳梗塞や脳出血による損傷が原因であり、萎縮は病変部位に依存します。前頭葉や側頭葉に限局した萎縮は特徴ではありません。
  4. Pick病
    正解です。Pick病では、前頭葉と側頭葉の限局性萎縮が見られます。これにより行動障害や言語障害が顕著となります。
  5. Lewy小体型認知症
    誤りです。Lewy小体型認知症では、萎縮よりも大脳皮質および脳幹の神経細胞内にLewy小体が蓄積することが特徴です。また、幻視やパーキンソン症状が顕著に現れます。

ワンポイントアドバイス

前頭側頭型認知症の特徴は、前頭葉と側頭葉の限局性萎縮による行動や言語の障害です。一方で、Alzheimer型認知症は記憶障害、Lewy小体型認知症は幻視とパーキンソニズムが特徴です。疾患ごとの萎縮部位や症状を整理して覚えましょう。