第59回

第59回理学療法士国家試験 午後問題5

51 歳 の 女 性。突 然 の 意 識 障 害 で 急 性 期 病 院 に 搬 入 さ れ た。意 識 レ ベ ル はJCSⅢ-200。血圧 182/102 mmHg。心拍数 72/分。項部硬直は陽性。発症時の頭部
CT(別冊No. 1)を別に示す。

連問の一部。前問はこちらから。

第59回理学療法士国家試験 午後問題4 51 歳 の 女 性。突 然 の 意 識 障 害 で 急 性 期 病 院 に 搬 入 さ れ た。意 識 レ ベ ル はJCSⅢ-20...

その後、急性期病院で2週間の保存的治療を受け、回復期リハビリテーション病院に転院した。転院後、徐々に自発性低下、行動異常および頻回な転倒を認めた。転院してから約2週後の頭部CT(別冊No. 2)を別に示す。

Screenshot

考えられる他の特徴的な症状はどれか。

  1. 下痢
  2. 発熱
  3. 血圧上昇
  4. 視野障害
  5. 排尿障害

解答解説

正解は 5. 排尿障害 です。

解説

提示された頭部CT画像では、側脳室が拡大している所見が認められます。このような脳室拡大を伴う症状は、正常圧水頭症(NPH: Normal Pressure Hydrocephalus)を強く示唆します。正常圧水頭症の主な特徴は、以下のHakimの三徴です。

  1. 歩行障害:歩幅が狭くなり、すり足歩行や頻回な転倒がみられる。
  2. 認知機能低下:自発性の低下、行動異常、認知症様症状が進行する。
  3. 排尿障害:尿意切迫感や頻尿、進行すると尿失禁。

問題文中の「自発性低下」「行動異常」「頻回な転倒」といった症状は、すでにHakimの三徴のうち2つを満たしており、排尿障害が現れる可能性が非常に高いと考えられます。

各選択肢の解説

  1. 下痢
    正常圧水頭症では消化器症状は含まれません。下痢は感染症や薬剤の副作用などが原因として考えられるため、この選択肢は誤りです。
  2. 発熱
    発熱は感染症や炎症性疾患(髄膜炎など)でみられる症状ですが、正常圧水頭症では典型的な症状ではありません。この選択肢は誤りです。
  3. 血圧上昇
    血圧上昇は正常圧水頭症の直接的な症状ではなく、高血圧性疾患や脳血管障害のリスク要因として関連することが多いです。この選択肢は誤りです。
  4. 視野障害
    視野障害は、脳腫瘍や脳卒中など視覚路が障害される疾患でみられる症状です。正常圧水頭症の典型的な症状ではありません。この選択肢は誤りです。
  5. 排尿障害(正解)
    排尿障害は正常圧水頭症の三徴の一つで、早期には尿意切迫感や頻尿が現れ、進行すると尿失禁がみられます。この選択肢が正解です。

ワンポイントアドバイス

正常圧水頭症の診断と治療のポイント

  1. 画像診断:CTまたはMRIで脳室拡大を確認する。
  2. 症状の評価:Hakimの三徴(歩行障害、認知機能低下、排尿障害)を把握する。
  3. 髄液排除試験:髄液を抜いた後の症状改善を確認する(タップテスト)。
  4. 治療:確定診断後、シャント術(髄液排除手術)が有効。

正常圧水頭症は適切な治療で症状が改善する可能性が高い疾患であり、早期診断と介入が重要です。