第59回

第59回理学療法士国家試験 午後問題2

Danielsらの徒手筋力テストで肩関節屈曲の段階3を測定する際に見られた代償運動を引き起こしている筋はどれか。

  1. 僧帽筋
  2. 棘上筋
  3. 大胸筋
  4. 上腕二頭筋
  5. 上腕三頭筋

解答解説

正解は 4. 上腕二頭筋 です。

図のような代償運動(肘がわずかに屈曲している動作)は、上腕二頭筋が代償筋として過剰に働いている可能性を示唆します。上腕二頭筋の長頭は肩関節の屈曲に二次的に関与するため、肩関節屈曲筋(主に三角筋前部)が弱い場合、代償として肘の屈曲が伴うことがあります。

各選択肢の解説

  1. 僧帽筋
    僧帽筋は主に肩甲骨の挙上、内転、回旋を担う筋であり、肩関節屈曲には直接関与しません。僧帽筋が代償として働く場合、肩甲骨の不必要な挙上が見られることがありますが、今回の代償運動(肘屈曲)には該当しません。
  2. 棘上筋
    棘上筋は肩関節外転の初動を補助する筋であり、肩関節屈曲の代償には関与しません。このため、今回の代償運動の原因ではありません。
  3. 大胸筋
    大胸筋(特に鎖骨部)は肩関節屈曲に補助的に関与しますが、代償運動としては肩を前方に引き出す動きが顕著になります。今回の代償運動(肘の屈曲)とは関連がありません。
  4. 上腕二頭筋(正解)
    上腕二頭筋は肘関節屈曲や前腕回外を主な作用としますが、その長頭が肩関節の屈曲にも補助的に関与します。肩関節屈曲筋(特に三角筋前部や烏口腕筋)が弱い場合、上腕二頭筋が代償として過剰に働き、肘が屈曲する代償動作が発生します。
  5. 上腕三頭筋
    上腕三頭筋は肘関節の伸展を主な作用とし、肩関節の動きにはほとんど関与しません。代償運動としても肘の伸展が見られるだけであり、今回の代償運動には該当しません。

各筋肉の作用と代償動作

  • 僧帽筋:肩甲骨の挙上・内転・回旋 → 肩甲骨の不必要な挙上による代償。
  • 棘上筋:肩関節外転の初動を補助 → 肩屈曲の代償には関与しない。
  • 大胸筋:肩関節の内旋・内転、および鎖骨部は屈曲を補助 → 肩を前方に引き出す代償動作が見られる。
  • 上腕二頭筋:肘関節屈曲、前腕回外、肩関節屈曲を補助 → 肘が屈曲する代償動作が発生。
  • 上腕三頭筋:肘関節の伸展 → 肩関節屈曲には関与しない。

ワンポイントアドバイス

肩関節屈曲の徒手筋力テストでは、**上腕二頭筋による代償(肘屈曲)**がよく見られます。このような代償動作を防ぐには、肘をしっかり伸ばした状態を保持しながらテストを行うことが重要です。また、主動筋である三角筋前部や烏口腕筋の筋力低下が疑われる場合には、追加の筋力評価を実施する必要があります。