66歳の男性。意識障害で右上肢を下に腹臥位で体動困難となっているところを発見された。両膝、右手首、右肘および右前胸部に多発褥瘡を認め、脱水症を伴うことから発症後数日が経過していると考えられた。保存的加療とともに理学療法が開始され、徐々に意識障害が改善すると、入院後数か月で訓練中に右手のしびれを訴え、図のような手を呈した。
この患者の右手に適応となるのはどれか。
- BFO
- 虫様筋カフ
- 短対立装具
- 手関節駆動式把持装具
- コックアップ・スプリント
解答解説
正解は2(虫様筋カフ)です。
図に示された手は、尺骨神経麻痺による「鷲手変形」を呈しています。この状態では、虫様筋(中手指節関節の屈曲および指節間関節の伸展に関与)が麻痺し、手指の巧緻性が低下します。虫様筋カフは、指の位置を補正し、巧緻性や手の機能をサポートするために使用されます。
各選択肢の解説
- BFO(ブレース・フォー・オートノミー)
上肢全体の外骨格のような装具で、重度の麻痺に対して用いられます。この患者のように尺骨神経麻痺による「鷲手変形」には適しておらず、適応外です。 - 虫様筋カフ
虫様筋麻痺により鷲手変形を呈する場合に用いられる装具です。中手指節関節の屈曲を補助し、指の巧緻性を高める目的で使用されます。この患者の状態に最も適しています。 - 短対立装具
母指の対立動作を補助する装具で、正中神経麻痺などに適応があります。この患者のような尺骨神経麻痺による鷲手変形には適応しません。 - 手関節駆動式把持装具
手関節の動きを利用して手指の把持を行う装具で、主にC6レベルの頸髄損傷患者に用います。この患者のような尺骨神経麻痺には適応外です。 - コックアップ・スプリント
手関節の背屈位を保持する装具で、橈骨神経麻痺や手根管症候群に用いられます。手指の変形を補正する目的では使用されないため、鷲手変形には適していません。
ワンポイントアドバイス
鷲手変形は、尺骨神経麻痺による手指の変形で、特に虫様筋と骨間筋が障害されることで発生します。虫様筋カフは、指の屈曲と伸展を補助する重要な装具です。鷲手変形では、この装具によって巧緻性の改善が期待できます。