20歳の男性。自転車エルゴメーターを用いて、1分間に20ワット増加させるランプ負荷試験にて心肺運動負荷試験を行った。その際の分時換気量、二酸化炭素排泄量および酸素摂取量の変化を図に示す。①から③までの期間および④と⑤の時点に生じている生体の変化として正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①では動脈血酸素分圧が上昇する。
- ②では乳酸が増加する。
- ③では動脈血pHが急激に上昇する。
- ④では無酸素性のATP産生が加わる。
- ⑤では動脈酸素飽和度が低下し始める。
解答解説
正解は2. ②では乳酸が増加する。と4. ④では無酸素性のATP産生が加わる。です。
解説
- ②では乳酸が増加する
②の時点では、有酸素運動の限界に近づき始め、嫌気性代謝が部分的に始まるため、乳酸が徐々に産生される段階です。この時点から乳酸が血中に蓄積し始めることが特徴です。正しい選択肢です。 - ④では無酸素性のATP産生が加わる
④の時点では、運動強度がさらに高まり、有酸素性エネルギー供給では需要を満たせず、解糖系による無酸素性ATP産生が活発になります。これにより乳酸が急激に増加します。正しい選択肢です。
その他の選択肢
- ①では動脈血酸素分圧が上昇する
①の時点では運動の初期段階であり、肺での酸素交換は正常に機能していますが、動脈血酸素分圧が特別に上昇するわけではありません。不正解です。 - ③では動脈血pHが急激に上昇する
③ではむしろ、運動強度の上昇に伴い乳酸がさらに増加し、動脈血pHは低下します。急激な上昇は見られません。不正解です。 - ⑤では動脈酸素飽和度が低下し始める
⑤の時点では分時換気量が最大に達し、酸素摂取量も増加しており、動脈酸素飽和度が低下するような状態にはありません。不正解です。
ワンポイントアドバイス
心肺運動負荷試験の図を読む際は、運動強度が上がるにつれて、有酸素運動から無酸素運動への移行が生じる点を理解することが重要です。特に、乳酸が蓄積し始める閾値(乳酸閾値)や無酸素性代謝の関与が増える段階を正確に押さえましょう。また、動脈血pHや酸素飽和度の変化を見分ける力を鍛えることがポイントです。