第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題23

随意運動について正しいのはどれか。

  1. γ運動ニューロンは、随意的な筋収縮の命令を直接筋肉に伝える。
  2. 一次運動野では、巧緻な動きを必要とする手の領域が小さい。
  3. Betzの巨大錐体細胞は、補足運動野のⅤ層に存在する。
  4. 小脳は、運動をスムーズにする役割を担っている。
  5. 放線冠の障害で、錐体外路症状が出現する。

解答解説

正解は4.小脳は、運動をスムーズにする役割を担っているです。

小脳は、随意運動のスムーズな実行や精緻な調整に重要な役割を果たしています。具体的には、運動計画のフィードバックや誤差修正、筋トーヌスの調整に関与します。この機能により、滑らかで正確な運動が可能となります。

選択肢の解説

  1. γ運動ニューロンは、随意的な筋収縮の命令を直接筋肉に伝える。
    γ運動ニューロンは筋紡錘を調整する役割を持ち、筋肉そのものを収縮させるのではなく、筋紡錘の感度を調整することで間接的に筋収縮に関与します。筋肉に直接収縮命令を伝えるのはα運動ニューロンです。この選択肢は誤りです。
  2. 一次運動野では、巧緻な動きを必要とする手の領域が小さい。
    一次運動野(ブロードマンの4野)では、手や指のように巧緻な動きを必要とする部位は大きな領域を占めています。これは運動野の「ホモンクルス」の分布から明らかです。この選択肢は誤りです。
  3. Betzの巨大錐体細胞は、補足運動野のⅤ層に存在する。
    Betzの巨大錐体細胞は、一次運動野(ブロードマンの4野)のⅤ層に存在し、錐体路を構成する細胞です。補足運動野ではなく一次運動野に存在するため、この選択肢は誤りです。
  4. 小脳は、運動をスムーズにする役割を担っている。
    小脳は随意運動のスムーズな実行やタイミング調整、運動の誤差修正に重要な役割を果たします。運動を計画通りに実行し、スムーズで正確な動きを実現するために必要な器官です。正しい選択肢です。
  5. 放線冠の障害で、錐体外路症状が出現する。
    放線冠は大脳皮質から脊髄へ続く神経線維の束で、錐体路の一部を構成します。放線冠の障害では、錐体路症状(痙性麻痺や腱反射亢進など)が現れますが、錐体外路症状(筋緊張低下や不随意運動など)は現れません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

随意運動に関与する神経系の機能を整理して覚えることが重要です。特に、小脳は「運動のスムーズさや精緻な調整」、一次運動野は「運動の指令を出す中心」、γ運動ニューロンは「筋紡錘の調節」といったそれぞれの役割を理解しておくと、関連問題にも対応しやすくなります。