第58回

第58回理学療法士国家試験 午前問題14

42歳の女性。3か月前に手足がしびれるようになり、1か月前から手足の脱力を自覚した。神経内科を受診し慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーと診断され、ステロイド療法が開始された。筋電図検査所見として正しいのはどれか。

  1. 誘発筋電図で伝導速度が低下する。
  2. 誘発筋電図でF波の潜時が短縮する。
  3. 針筋電図で低振幅・短持続電位波形が出現する。
  4. 誘発筋電図の反復刺激試験でwaning(M波の振幅が漸減)を認める。
  5. 誘発筋電図の反復刺激試験でwaxing(M波の振幅が漸増)を認める。

解答解説

正解は1.誘発筋電図で伝導速度が低下するです。

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)は、末梢神経の脱髄が主な病態です。そのため、神経伝導速度(NCV)の低下が特徴的です。これは、ミエリン鞘の障害によって神経信号の伝達が妨げられるために起こります。

各選択肢の解説

  1. 誘発筋電図で伝導速度が低下する。
    正解です。CIDPの典型的な所見として伝導速度の低下が認められます。脱髄のため、電気信号が正常に伝達できない状態を反映します。
  2. 誘発筋電図でF波の潜時が短縮する。
    CIDPではF波の潜時はむしろ延長します。F波は神経伝導速度を評価するための重要な指標ですが、短縮は一般的にみられません。
  3. 針筋電図で低振幅・短持続電位波形が出現する。
    低振幅・短持続電位波形は筋原性疾患の所見であり、CIDPのような神経原性疾患では見られません。CIDPでは神経伝達に異常がありますが、筋の一次障害はありません。
  4. 誘発筋電図の反復刺激試験でwaning(M波の振幅が漸減)を認める。
    Waningは神経筋接合部疾患(例: 重症筋無力症)に特徴的であり、CIDPでは認められません。
  5. 誘発筋電図の反復刺激試験でwaxing(M波の振幅が漸増)を認める。
    WaxingはLambert-Eaton症候群などの特定の疾患で見られる所見で、CIDPには該当しません。

ワンポイントアドバイス

CIDPでは、伝導ブロックや伝導速度低下、潜時延長などの脱髄性変化が特徴です。筋電図や神経伝導検査で、これらの所見を理解し、疾患の病態を反映しているかを確認することが重要です。