第57回

第57回理学療法士国家試験 午後問題8

47歳の女性。多発性硬化症。30歳で発症し、寛解と増悪を繰り返した後、完全
寛解していた。週前に視力低下と小脳症状が出現し、入院となった。視神経と右
小脳半球に脱髄を認める。過回内テストで図のような動きが観察された。

この患者にみられる所見はどれか。

  1. 振戦
  2. 運動分解
  3. 測定異常
  4. 協働収縮異常
  5. 反復拮抗運動不能

解答解説

正解は3です。

図のように過回内テストで上下の動きがみられる所見は、小脳性運動失調に特徴的な測定異常です。測定異常とは、運動の目標に対する距離や方向の調整が適切に行えない状態で、特に小脳の右半球が障害されると、右側の運動においてこのような異常が出現します。

各選択肢の解説

  1. 振戦
    振戦は小脳障害でみられることがありますが、通常は静止時ではなく運動時にみられる意図振戦です。この症例では、図の動きが振戦によるものではなく、測定異常によるものと考えられます。
  2. 運動分解
    運動分解とは、小脳障害により運動がなめらかに行えず、個々の関節ごとに分離して動作する所見です。しかし、この所見は今回の過回内テストの図で観察されるものではありません。
  3. 測定異常(正解)
    正しい選択肢です。測定異常は、小脳の障害により運動の目標に対する調整が不正確になる現象です。この症例では、過回内テスト中に前腕が上下に揺れるような動きがみられ、測定異常の典型的な表現といえます。
  4. 協働収縮異常
    協働収縮異常は、拮抗筋と主動筋の協調がうまくいかず、過剰な筋収縮がみられる状態です。これは筋の協調性が障害されるものですが、今回の所見とは一致しません。
  5. 反復拮抗運動不能
    反復拮抗運動不能は、小脳障害による現象で、例えば回内・回外運動を素早く交互に繰り返すことが難しい状態を指します。しかし、この症例では過回内テストにおける測定異常が観察されており、反復拮抗運動不能とは異なります。

ワンポイントアドバイス

測定異常は小脳性運動失調の典型的な症状であり、特に目標に対して運動が過剰または不足してしまう現象を指します。過回内テストでは前腕が上下に動くことが特徴的です。小脳障害を疑う際には、測定異常に加えて意図振戦や運動分解の有無も確認することが重要です。