第58回

第58回理学療法士国家試験 午前問題7

両眼を強く閉眼するよう指示したところ、左側の兎眼が認められた。同じ脳神経の障害で生じる症状はどれか。

  1. 右方視したときの様子
  2. 普通に開眼したときの様子
  3. 歯をむき出しにしたときの様子
  4. 「アー」と発声したときの軟口蓋と咽頭後壁の様子
  5. 舌をまっすぐ出したときの様子

解答解説

正解は3. 歯をむき出しにしたときの様子です。

兎眼は顔面神経(第VII脳神経)の麻痺による症状です。顔面神経は眼輪筋の支配を行っているため、障害があると閉眼が不完全になり兎眼が生じます。同時に、顔面神経は表情筋全般を支配しているため、歯をむき出しにする動作が困難になることもよくみられます。したがって、図3に示される動作が同じ脳神経障害で生じる症状として該当します。

各選択肢の解説

  1. 右方視したときの様子(図1)
    この選択肢は誤りです。この動作は外転神経(第VI脳神経)や動眼神経(第III脳神経)が関与しており、顔面神経とは異なるため該当しません。
  2. 普通に開眼したときの様子(図2)
    この選択肢は誤りです。開眼は主に動眼神経(第III脳神経)が関与しており、顔面神経の障害とは関係がありません。
  3. 歯をむき出しにしたときの様子(図3)
    この選択肢が正解です。歯をむき出しにする動作には表情筋(特に口輪筋など)が関与し、これらは顔面神経によって支配されています。顔面神経の麻痺があるとこの動作が困難になります。
  4. 「アー」と発声したときの軟口蓋と咽頭後壁の様子(図4)
    この選択肢は誤りです。「アー」の発声時に見られる軟口蓋や咽頭の動きには迷走神経(第X脳神経)や舌咽神経(第IX脳神経)が関与しています。顔面神経の障害とは無関係です。
  5. 舌をまっすぐ出したときの様子(図5)
    この選択肢は誤りです。舌の運動は主に舌下神経(第XII脳神経)が関与しています。顔面神経の麻痺とは無関係です。

ワンポイントアドバイス

顔面神経(第VII脳神経)は表情筋のほか、涙腺や唾液腺、舌前2/3の味覚も支配しています。閉眼や表情筋の動きに障害が生じた場合は、顔面神経麻痺を疑いましょう。ベル麻痺などの病態を含め、関連症状を覚えておくと役立ちます。