第57回

第57回理学療法士国家試験 午前問題11

75歳の男性。糖尿病により右下腿切断。義足歩行練習時に右膝の膝折れを起こしそうな不安定感を訴えた。考えられる原因はどれか。2つ選べ。

  1. 初期屈曲角が過大である。
  2. 初期内転角が不足している。
  3. 右股関節の屈曲可動域制限がある。
  4. 右膝関節の伸展筋力が低下している。
  5. ソケットが足部に対し後方に位置しすぎている。

解答解説

正解は1. 初期屈曲角が過大である4. 右膝関節の伸展筋力が低下しているです。

義足装着者が膝折れを訴える場合、義足の設計不良や患者自身の筋力・関節可動域に問題がある可能性があります。本症例では、義足の初期屈曲角の設定と膝関節伸展筋力の低下が、膝折れの主な原因と考えられます。

各選択肢の解説

  1. 初期屈曲角が過大である。(正解)
    義足の初期屈曲角が過大であると、歩行中の体重支持期に膝が過剰に屈曲する力が加わり、膝折れを誘発します。この設定は膝の安定性を低下させるため、膝折れの原因となり得ます。これは典型的な原因の一つです。
  2. 初期内転角が不足している。
    初期内転角の不足は、義足の外転による不安定感や歩行のエネルギー効率の低下につながりますが、膝折れの直接的な原因にはなりません。このため不適切です。
  3. 右股関節の屈曲可動域制限がある。
    股関節の屈曲可動域制限がある場合、義足歩行の振り出しに影響を及ぼしますが、膝折れの直接的な原因とは言えません。このため、適切ではありません。
  4. 右膝関節の伸展筋力が低下している。(正解)
    膝関節の伸展筋力(大腿四頭筋)が低下すると、歩行中の体重支持期に膝を伸展する力が不足し、膝折れを起こしやすくなります。これは義足歩行中の膝の不安定感に直接的な影響を与えるため、重要な原因の一つです。
  5. ソケットが足部に対し後方に位置しすぎている。
    ソケットが足部に対して後方に位置すると、膝にかかる力の方向が変化し、膝伸展モーメントが増加するため、膝折れが起きるリスクはむしろ低下します。この設定は膝折れの原因とはならないため、不適切です。

ワンポイントアドバイス

膝折れを防ぐためには、義足の調整(特に初期屈曲角)や患者自身の筋力強化が重要です。義足使用者では、膝関節の伸展筋力を高めるリハビリが安定した歩行に直結します。また、義足の設計不良が疑われる場合は、義肢装具士と協力して調整を行うことが必要です。