大腿骨近位部骨折に対する人工骨頭置換術(後方アプローチ)後、全荷重が可能な状態での理学療法で適切でないのはどれか。
- 背臥位における膝伸展位での股関節外転運動
- 腹臥位における他動的な股関節伸展運動
- 座位における重錘を用いた大腿四頭筋の筋力増強
- 低い椅子から股関節内旋位での立ち上がり練習
- 歩行器を用いた屋外歩行練習
解答解説
正解は4.低い椅子から股関節内旋位での立ち上がり練習です。
人工骨頭置換術(後方アプローチ)では、術後に脱臼リスクが高い股関節内旋、内転、過度な屈曲(90度以上)を避ける必要があります。低い椅子からの立ち上がりは股関節が屈曲しやすく、さらに内旋位での動作は脱臼リスクを増大させるため不適切です。
各選択肢の解説
- 背臥位における膝伸展位での股関節外転運動
適切。股関節外転筋(中殿筋、小殿筋)は歩行や安定性に重要であり、背臥位での外転運動は安全かつ推奨される運動です。 - 腹臥位における他動的な股関節伸展運動
適切。腹臥位での他動的な股関節伸展運動は、筋や関節の柔軟性を保つために有効であり、後方アプローチの制限にも該当しません。 - 座位における重錘を用いた大腿四頭筋の筋力増強
適切。大腿四頭筋の筋力強化は歩行や起立動作の改善に役立ちます。股関節の内旋や屈曲が過度にならない範囲で行う場合、安全に実施可能です。 - 低い椅子から股関節内旋位での立ち上がり練習
不適切。低い椅子では股関節が過度に屈曲しやすく、内旋位での動作は脱臼リスクを高めます。これらの動作は後方アプローチの禁忌に該当するため避けるべきです。 - 歩行器を用いた屋外歩行練習
適切。歩行器を用いた歩行練習は、バランスや安全性を確保しながら荷重をかけるために有効です。屋外歩行も全荷重可能な状態であれば適切です。
ワンポイントアドバイス
人工骨頭置換術後のリハビリでは、後方アプローチ特有の禁忌動作(股関節内旋、内転、過度な屈曲)を理解し、患者が脱臼リスクの高い動作を避けるよう指導することが重要です。適切な運動選択で、股関節周囲筋の筋力向上や機能回復を目指しましょう。