第58回

第58回理学療法士国家試験 午後問題8

6歳の女児。公園で転倒し、骨折の診断で同日緊急手術を受けた。術後のエック
ス線写真(別冊No. 4)を別に示す。

術後の患側上肢の理学療法で正しいのはどれか。

  1. 術後 1 週で筋力増強運動を開始する。
  2. 肘関節の運動は自動より他動を優先する。
  3. 術後 2 週で肩関節の可動域練習を開始する。
  4. 仮骨形成してから肘関節の可動域練習を開始する。
  5. 術後翌日に急激な痛みがあっても手指運動を行う。

解答解説

正解は4.仮骨形成してから肘関節の可動域練習を開始するです。

術後の骨折治療では、仮骨が形成されて骨癒合がある程度進むまで、骨折部位への過剰な負荷を避けることが重要です。特に、今回のエックス線写真から、骨折部位は上腕骨顆上骨折が疑われます。この部位の骨折では、肘関節を含む患部への無理な運動は骨癒合を妨げるため、仮骨形成を確認してから肘関節の可動域練習を開始するのが適切です。

各選択肢の解説

  1. 術後1週で筋力増強運動を開始する。
    この選択肢は誤りです。術後1週の段階で筋力増強運動を行うと、骨折部位への過剰な負荷となり、骨癒合を妨げる可能性があります。筋力増強運動は骨癒合が進んでから開始すべきです。
  2. 肘関節の運動は自動より他動を優先する。
    この選択肢は誤りです。他動運動は患部に対する制御が難しく、骨折部位への負担が大きくなる可能性があります。術後早期には他動運動よりも安静を優先し、骨癒合が確認された後に慎重に可動域練習を行います。
  3. 術後2週で肩関節の可動域練習を開始する。
    この選択肢は誤りです。肩関節に直接負荷がかからない場合は、術後早期から可動域練習を行うことが可能ですが、今回の問題の焦点は肘関節にあるため、肩関節の練習開始時期は不適切な選択肢となります。
  4. 仮骨形成してから肘関節の可動域練習を開始する。
    この選択肢が正解です。仮骨形成を確認してから肘関節の可動域練習を開始することで、骨癒合を妨げるリスクを最小限に抑えながらリハビリを進めることができます。
  5. 術後翌日に急激な痛みがあっても手指運動を行う。
    この選択肢は誤りです。術後早期には手指運動を行うことは重要ですが、急激な痛みがある場合は無理に運動を続けるべきではありません。痛みが強い場合は運動を中断し、医師に相談する必要があります。

ワンポイントアドバイス

上腕骨顆上骨折は小児に多く見られる骨折で、術後のリハビリでは骨癒合を確認しながら慎重に進めることが重要です。仮骨形成の確認が安全なリハビリ開始の目安となるため、急激な運動を避け、適切な時期を見極めることを覚えておきましょう。